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ニュースリリース

可塑剤工業会は、REACHデンマーク制限に対しECHAから募集されている
下記意見書を12月15日に提出した
 
2011年12月15日

REACHデンマーク制限提案に対する意見書No.1

(規制のあり方に関して)

日本可塑剤工業会(JPIA)
(Japan Plasticizer Industry Association)
日本ビニル工業会(JVGM)
(Japan Vinyl Goods Manufacturers Association)


[緒言]
 上記提案についてコメントの機会を与えられたことを歓迎する。
 JPIAおよびJVGMは、本制限提案の対象となる化学物質を含む日本の製品(Articles)が交易を通じて、EUと密接に関係しているため、本制限提案に対し強い関心を持っている。
 本制限提案はDEHPを含む4物質について、現行のREACH規制に対する追加的規制であり、科学的観点、及び改正案提出の手順においても化学物質規制に関する基本的な問題を抱えている。本制限提案が実施されれば、制限の対象となっている特定の化学物質に止まらず、ややもすると予防原則の乱用にも繋がりかねない規制適用が予想される。これらは規制の在り方にかかわる本質的な問題である。故に、我々は重大な懸念を持っている。

 JPIAおよびJVGMは意見書No.1で「規制のあり方に関して」を、意見書No.2で「4種のフタル酸エステル関して」を述べる2つの意見書を提出する。本意見書はNo.1である。

 

[要望]
 デンマークの提案した4種のフタル酸エステル制限は、以下の論拠により不適切と考えられるので白紙撤回とし、現在実施中の認可プロセスを着実に実施することをお願いする。

 
[要望の論拠]

1. REACH規制における認可と制限の整合性
 本制限提案は、REACH規制手順の枠組みを逸脱し、認可プロセスの進行中に、厳密な根拠もなく、
制限を提案することはREACH規則対応に混乱を招いていて、運用上の規約に則っていない。
2. Combined Effects
 本制限提案は、科学的に確立されていないCombined Effects(本ドシエで使われているDose
Additional Models,Combined Exposures,Combination Effects 等を本意見書ではCombined Effectsと記す)という評価手法を取り入れている。その規準には客観性がなく、不確実性が大きく、拡大解釈や広範な適用が懸念される。
3. 過大な暴露推定
 本制限提案で議論されている暴露推定は、特殊な例による非現実的で過大な暴露シナリオに基づいており、結果として、Articleに使用される化学物資のリスクを過大評価している。
4. 安全性評価時の安全係数の設定
 本提案制限では、安全性に関する豊富なデータがある化学物質であり、他の化学物質に比較し不確実性が低いにもかかわらず、毒性評価において安全係数を高く設定している。結果としてリスクを過大評価している。
5. 毒性のエンドポイント
 本制限提案は、懸念するリスクの特定(エンドポイント)に混乱があり、懸念されないリスクを過大評価している。

以下、化学物質規制に関する基本的な問題点を詳細に述べる。
 
1. REACH規制における認可と制限の整合性
 本ドシエの対象物質は既にREACH規則に則り登録され、認可対象物質に指定され、サンセット日も決まっており、認可申請に向けて関係者が準備を進行中である。REACH規則第69条2項に従って現在進行中の認可プロセスを先行すべきである。
2. Combined Effects
 
リスク評価は、科学的に確立した手法を採用すべきである。本ドシエが採用しているCombined Effectsは、科学的に未確立である。条件や物質群等を特定するリスク評価手法は厳密な科学的基盤を持った手法が確立されなければならない。さもなければ、規制に裁量の幅が広くなり、透明性と確実性が損なわれる。そもそも、個別の化学物質のリスク評価においては、充分な安全係数が設定されており、累積的・統合的な評価手法を導入しなければならない緊急性や必然性は認められない。 この概念の導入は、化学物質の無限の組み合わせが考えられる混合物や調剤系へ波及拡大し、化学産業全般にかかわる重大な影響が懸念される。

3. 過大な暴露推定
  化学物質のリスク評価は、最悪ケースを想定する場合でも現実性のあるシナリオに基づくことが基本 である。本ドシエは、非現実的な暴露シナリオを採用し、摂取量を著しく過大に推定している。このことは英国毒性委員会(COT)も問題提起している。
http://cot.food.gov.uk/cotmtgs/cotmeets/cotmeet2011/cotmeet1nov2011/cotagendapapers1nov2011
http://cot.food.gov.uk/pdfs/cotstatementphthalates201106.pdf#search='COT

statement Nov 6 2011'
 
特定個別物質のリスクを高く評価したうえで、科学的に未確立なCombined Effectsとして重ね合 わせることにより、推定されるリスクをさらに高めている。
 
 本ドシエは、DEHPを含む4物質を対象にしているが、DEHPに比較して他の物質の使用量は、著しく少ない事実を考慮していない。DEHPについて、過去の欧米日による詳細なリスク評価では、いずれも食品経由の摂取が主たるものとの結論に至っているが、英国食品基準庁(FSA)は食事由来のみの暴露ではヒト健康リスクにならないとしている。
http://cot.food.gov.uk/cotmtgs/cotmeets/cotmeet2011/cotmeet1nov2011/cotagendapapers1nov2011
 
  しかるに、本ドシエでは、これらの物質が含まれた製品の使用時の摂取を誇張している。
 

例えば、6-7歳児は消しゴムを1日あたり1時間で8mg(ゴマ2〜3粒相当)を摂取するとし、リスクの大きな要因としている。大人は性具やサンダル(DBP)からの寄与が大きいとしている。そもそも、消しゴムについては、過去にデンマークから制限提案が出されたが、欧州委員会健康と環境リスク局(SCHER)に於いて、暴露推計が過大であり、懸念されるリスクは生じないとの判断がなされている。
http://ec.europa.eu/health/opinions/en/phthalates-school-supplies/index.htm

 
 本ドシエのサンダルについては、毎日、10時間はき続けるとの想定を置き、DBPの摂取を懸念されるリスクと提起している。しかし、サンダルでDBPを使用するものは稀であり、また、使用時間の想定も過大である。
 
4. 安全性評価時の安全係数の設定
 本ドシエで採用されている安全係数は過大であり、リスクを高めに誘導している。  そもそも安全係数は、種差間、種内差を考慮して設定されるが、EFSAはAF(感受性)を、種差間を10、ヒトの個人差も10を取って100としている。しかしながらDEHPの精巣毒性には、げっ歯類と霊長類とにおいて種差の有ることが明らかになっており、30が妥当と考える*。 *産業技術総合研究所 化学物質リスク評価センター 中西他 2005フタル酸エステル詳細リスク評価書
 
 この安全係数の取り方は、動物実験の内容により異なるが, 2世代試験等長期毒性試験では過大なAFを取る必要性はないとされている。
 
 ちなみに、DEHPについては、霊長類で毒性試験データが取られており、規制の根拠となるエンドポイントとされているげっ歯類で観察された精巣の成長阻害は認められなかった。
 
5. 毒性のエンドポイント
 本ドシエは、複数のエンドポイントを取り上げ、それらを全体として、リスクが増大されているかのような議論を行っている。このことは、化学物質規制は、最も感受性の高いエンドポイントに基づいて設定されるべきとの根本的な考え方と整合しない。仮に、複数のエンドポイントを考慮すべき場合は、それぞれのエンドポイント毎にリスク・キャラクタリゼーションを行い、基準値を設けるべきである。本提案はこのような規制のあり方を逸脱するものであり、規制に不透明性と混乱を生じるアプローチであり大いに懸念される。

本ドシエではフタル酸エステルのエンドポイントを精巣毒性、生殖毒性から内分泌かく乱作用(Endocrine Disruption)をそのまま結びつけている。DEHP等フタル酸エステルのエンドポイントと内分泌かく乱作用の有害エンドポイントとの因果関係は科学的に立証されていない。
 日本の環境省はDEHPを含む9種の可塑剤について膨大な動物試験を行い、ヒトにも生態系にも内分泌撹乱作用は認められない(環境ホルモンではない)とする研究結果を世界に先駆けて発表している。http://www.env.go.jp/en/chemi/ed/extend2005_full.pdf

 
6.その他、考慮すべき重要事項:リサイクルへの悪影響
 DEHPは、軟質塩ビ製品の可塑剤として、広範な用途に応用されてきた。軟質塩ビ製品の多くは、マテリアル・リサイクル性能に優れ、多くの使用済み製品が、マットや床材等として再利用されている。
  デンマーク規制案は、これらの用途へのDHEPの使用を禁止するため、結果として、これまで行われていたリサイクルを遮断してしまう。上述のように、これらの製品への使用においてDEHPは懸念されるリスクを生じるものではなく、環境及び社会経済的視点で大きな否定的影響が生じることを強く懸念される。
 
・JPIAとは可塑剤の製造販売を行う、日本企業が組織する工業会である
・JVGMとは軟質塩ビ製品の製造販売を行う、日本企業が組織する工業会である
 
これらの内容について、より深くご理解いただくために意見書NO.2(4種のフタル酸エステルに関して)を添付しますので資料1をご参照下さい。
(資料1)

以上


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